妊婦健診で「卵巣が腫れている」と言われて不安…。治療は必要?
妊娠中の手術は、卵巣腫瘍の部分だけ切り取りますが、状況によっては片側の卵巣を全部切除することもあります。卵巣は2つあるので、もう一方の卵巣が残っていれば、次回の妊娠は可能で、妊娠する確率も変わりません。
妊婦健診で発見されるほとんどのケースは、良性であることが多く、卵巣腫瘍のおよそ80%は良性の「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」で、水や血液などが卵巣の中にたまって起こります。
妊娠初期に、卵巣が自然に腫れている状態も、「ルテイン嚢胞(ルテインのうほう)」(黄体嚢胞)と呼ばれる良性の卵巣嚢腫の1つです。胎盤から分泌されるhCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)が卵巣を刺激して、卵巣の黄体という部分に水がたまり、自然に腫れている状態となります。胎盤が完成する妊娠16週ごろにはhCGの分泌が低下することで、卵巣の腫れは自然と消失するので、手術などの治療は必要ありません。
その後の妊娠経過が順調であれば、経腟分娩で出産することが可能です。ただし、一般的な妊婦さんと同じように、逆子や前置胎盤などの合併症を理由に帝王切開で出産することはあります。
悪性の卵巣腫瘍の場合は、妊娠週数と症状や進行度によって、今回の妊娠への影響も考えながら治療方法を検討します。妊娠初期(0~15週)は、赤ちゃんの体の器官ができる大事な時期のため、この時期におこなう精密検査や治療は胎児に異常や奇形を起こす危険があるため慎重におこないます。妊娠中期(16~27週)から妊娠後期(28週以降)に化学療法をおこなう場合は、おなかの中の赤ちゃんへの影響は少ないとされています。基本的に、経腟分娩で出産することは可能ですが、個々のさまざまな理由によって、帝王切開での出産となる場合もあります。
卵巣腫瘍は、良性でも、悪性でも、母体と赤ちゃんのそれぞれの危険性と利益を考えながら治療を進める必要があるので、担当医と十分に話し合いましょう。
卵巣腫瘍が妊娠や出産に与える影響
妊娠中に卵巣腫瘍がある場合、卵巣の根元から捻じれる「茎捻転(けいねんてん)」が起きたり、卵巣が破裂したりすることがあり、その際には緊急的に手術が必要です。
卵巣腫瘍を切り取らずそのままにしておくと、妊娠中は茎捻転が起きたり、卵巣が破裂したりする影響で、流産や早産を引き起こす可能性があります。