#33 「法律上も父になりたい裁判」とスッポンのような女
東京地方裁判所103号法廷にて
2019年4月15日、私は珍しい体験をしました。東京地方裁判所の103号法廷という大法廷で、裁判官と満員の傍聴人の前で、子育て体験の話をしたのです。
なんでそんなエライことになったのか?
それは「結婚の自由をすべての人に」訴訟、いわゆる同性婚訴訟の原告の一人になったからです。2019年2月から始まった “同性カップルでは結婚ができないので困っています” と訴える裁判で、札幌、東京、名古屋、大阪の4ヵ所で、13組の同性カップルが一斉提訴をしたのです。私と麻ちゃんはそのうちの1組。ニュースでご覧になった方も、いらっしゃるかもしれません。
しかし本当に、私の人生の訳のわからなさも、これでいよいよ極まれり。自分でもびっくりしています。
引っ込み思案で、子どもの頃は先生に指されると、それだけで飛び上がるような小心者だったのに、なぜ私は東京地方裁判所の大法廷などという、およそ人生で縁のないハズだった場所で、話をしているのでしょう……。
というわけで、事の次第を説明するには、訴訟よりずっとずっと前にさかのぼることになります。すべての始まりは、麻ちゃんの何気ない一言でした。
本気じゃないよね
事の起こりは9年前。麻ちゃんと結婚式をした数日後。2年がかりで作り上げ、大好きな人たちに見守られて行った結婚式の後、幸せな余韻にまだまだ夢見心地だった時のことです。「私たち、結婚式したんだね」なんて、うっとりする私を麻ちゃんがじっと見つめていました。そして、お揃いの真新しい結婚指輪の光る手を取って、こう言ったのです。
「いつか裁判しようね♡」
「愛しているよ」とか「幸せだよ」とか、そういうフレーズがくるはずでした。そこに突然ぶっこまれた “裁判” というワード。
裁判?
裁判って今言いました?
えっ、聞き違いじゃないよね?
裁判って、えーと、裁判?
ラブラブウフフな雰囲気になる予定が、いきなりの過激ワードでフリーズです。
固まった私を見て、麻ちゃんはニコニコと続けました。
「ほら、だって私たち、同性カップルだから結婚できないじゃん?だから、いつかアメリカみたいな裁判を起こそうよ!ね!」
“ね!”って、キラキラした目で言われたけれど、“えっ、これ、まさか本気じゃないよね!”。頼む、本気にならないで!
そんな私の胸の内を知ってか知らずか、麻ちゃんはそれからも度々「裁判」