連載記事:樹木希林からの命のバトン
「学校に行くのがあたり前」の空気に苦しむ親子へ【樹木希林からの命のバトン 第2回】
「死なないで…」
子どもの自殺がもっとも多いといわれる9月1日に、祈るようにこの言葉をつぶやいていた
樹木希林さん。樹木さんの娘の内田也哉子さんが母の言葉を残そうと、
『9月1日 母からのバトン』という書籍が生まれました。
1回目では樹木さんの言葉の意味するところ、伝えたかったメッセージについて考えてきました。
今回は、
「学校に行くのってあたり前なの?」というテーマで、学校以外の選択肢や具体的に親子が救われる方法について、前回に引き続き
不登校新聞の石井志昂(いしい しこう)編集長といっしょに考えていきたいと思います。
「『学校に行けない子どもたち』に最後まで想いを寄せ続けたワケ」の続きです。
■「学校に行くのがあたり前」の日本で苦しむ親子
不登校新聞 石井志昂編集長
小学1年生になると、日本では義務教育が始まり、社会のあたり前のこととして、子どもたちは学校に通います。
石井さんは、「不登校っていまの学歴社会のなかでは一大事なわけです。だから、将来を考えたときに、親は心配で学校に行かせたいと思うのは当然ですよね。ただ、
『学校がすべて』だと親が思っていると、子どもは
“学校に行ける子”だけが存在価値があると思って苦しんでしまいます」と話します。
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そんな「あたり前」という風潮がある学校との付き合い方において、樹木さんは彼女ならではの考え方を発揮し、まだ小学生だった頃の内田さんにこんな言葉をかけたといいます。
東京の公立だったんですけど、そのときはすごく合わなかったですねえ。私という“異物”が突然入ってきたことで、そのクラスにあったコミュニティがざわざわしてしまって。今思えば“いじめ”だったと思うんですけど、お友達ができないまま数か月を過ごして、毎日泣いて家に帰っていました。
(中略)
ある日、私があんまりつらそうだったからか、「やめれば?」と言ってきたんですよね。「そんなにつらいのに、何をガマンしてるの。やめればいいじゃない」って。私まだ、「やめる」の「や」の字も言ってないのに(笑)。
出典:『9月1日 母からのバトン』
この樹木さんの言葉について石井さんは、「大事なのは、学校が主なのではなくて、
『子どもが主』だという軸をしっかりとしておくことです。樹木さんのように、大事なのはあくまでも“あなた”なんだということを、子どもに伝えてあげることが大切です」と考察します。
ただ、「やめればいいじゃない」と娘に伝えた母親としての樹木さんの対応は、常識にとらわれていては、なかなかできるものではありません。子どもが主であるという軸がしっかりあったからこそ、こうした発言ができたのだろうと思うと、「肝が据わっているな」と石井さんは感心していました。