映画『永い言い訳』から見る、ママ不在の家庭のこと、妻がしておくべきこと
自転車に乗っていて車がそばをすごいスピードで通りすぎたとき、母親が突然死んでしまうドラマを見ているときなど、ふと頭によぎるのが「自分が死んでしまったら、家族はどうなってしまうのか?」という不安。
ママとしては、突然自分がいなくなってしまったあと、夫や子どもがどうなるか気になりますよね。映画『永い言い訳』では、突然妻を亡くした男性の姿が描かれています。
映画の主人公は、バス事故で突然妻を亡くした小説家。しかも妻を全く愛していなかったという不幸な男が、亡くなった後から妻のことを深く思い、愛していたことを思い出し、人生を再生させていく物語です。妻の親友もバス事故で一緒に亡くなり、その親友一家が、今回「ママがいなくなった家庭」として、注目したいポイントです。
ママを突然失った家庭に起こる出来事、最初の災難が、「アナフィラキシーショック」。親友一家には、小学生6年生の男の子、保育園に通う5歳の女の子がいて、女の子はエビとカニのアレルギーでした。
第2の災難は、「保育園のお見送り&お迎え問題」。親友一家は、パパが超距離トラックの運転手で、仕事に出たまま数日戻らない日もたまにあります。それまでは母親が送り迎えをやっていたわけで、いなくなったとなれば、お迎えが小学生の男の子の仕事になってしまいます。そして迎える第3の災難が「中学受験の問題」。男の子は、妹の世話や送り迎えが忙しく、塾を休んでしまったり授業に遅れてしまったりで、目標にしていた中学受験が難しくなってきます。
パパも、一番の頼りだったママが突然いなくなり、心にぽっかり穴が開いてしまったかのような状態に。
ほとんどの家庭では、子どもまわりのことはママが主導権を握って、パパが知らないことも多いのではないでしょうか。さしずめアレルギーぐらいは知っていても、食事のときに、「エビかカニが入っていませんか?」と確認するのは、ほとんどがママの役目だと思います。普段から、子どもの体質やかかりやすい病気、病気になったときにどう対処するのか(かかりつけ医はどこか)を共有して、医者通いなどはたまにパパにお願いするなど、お互いが同じ立場から、子どもの体について知っておくことが大切になります。
保育園の送迎問題も同じ。普段は園の送迎はママに任せきりだとしても、パパが代休の時や朝夕の時間に余裕がある時は、代わりに送り迎えをしてみて、「登園時間はいつまでか?」「最大何時まで預かってくれるか?」「準備するものは?」「どんなふうに受け渡すのか?」など、送り迎えや園についての基本的なことを共有することも大事です。
ママ不在が受験に与える影響は、経済的・時間的な制約ができてしまうことです。小学校高学年となると塾には1人で通えますが、ママがいなくなることで、お弁当を準備する負担や、兄弟の世話をする負担がかかってしまいます。
また中学受験は、ある程度お金がかかるもの。ママがいなくなった家庭では、パパも多少仕事をセーブしなくてはいけないので、収入面にも影響は出てきます。そうなったときに困らないためにも、普段から定期的な貯蓄も必須だと言えます。
ここからは、「妻」としてやっておくべきことについてです。映画の中で、主人公の小説家の男性は、亡くなった妻の遺品のスマートフォンから、あるものを見つけてしまいます。「もう愛していない。ひとかけらも」というメッセージでした。
自分が亡くなった後に、スマートフォンはもちろん、手帳や日記、手紙など、いろいろ詮索され、自分の思いとは違った形で人を傷つけたり、ショックを与えたりこともあるかもしれません。そんな悲しさ、もどかしさを招かないためにも、プライベートで見られたくないものは、必要なくなったら随時捨てたり、整理したりすることも大切。そういう意味でも、断捨離や整理整頓を、定期的に行うことは意味があるのかもしれません。
映画『永い言い訳』を、ママ的、そして妻的目線から紹介しましたが、この作品は、ママ世代にとても突き刺さる映画だと思います。日々家事や子育てに追われているママは、まわりから評価されたり、今の暮らしの幸せというものを実感できることが少ないかもしれません。この映画を通じて、人の死によって、もう元に戻すことはできない生活を振り返りながら、新たな人生を進むことの大切さ、愛することの美しさを改めて再確認できると思います。そして、家族そろって過ごせることのささやかな幸せや、何も起こらない普通の生活がいかに素晴らしいかを実感して欲しいです。
また、主人公を演じる本木雅弘さんの魅力も見どころのひとつ。実生活では子育て経験がありながらも、劇中では初めて子どもに触れる不器用な小説家を演じています。子どものような一面を残した愛嬌たっぷりかつダメさのある男性役が、はまり役とも言えます。妻が死ぬ前と後で、姿も内面も大きく変化しますが、どちらもとても魅力的でセクシーです。
1人はもちろん、ママ友同士で、夫婦で観るのもおすすめの映画『永い言い訳』を、ぜひチェックしてみてください。
『永い言い訳』
原作・脚本・監督:西川美和
出演:本木雅弘、竹原ピストル、深津絵里、池松壮亮、黒木華ほか
配給:アスミック・エース
10月14日(金)より全国ロードショー
http://nagai-iiwake.com
©2016「永い言い訳」製作委員会
<文・写真:フリーランス記者武田 由紀子>
ママとしては、突然自分がいなくなってしまったあと、夫や子どもがどうなるか気になりますよね。映画『永い言い訳』では、突然妻を亡くした男性の姿が描かれています。
ママ不在で起こる、一番怖いことが「アナフィラキシーショック」
映画の主人公は、バス事故で突然妻を亡くした小説家。しかも妻を全く愛していなかったという不幸な男が、亡くなった後から妻のことを深く思い、愛していたことを思い出し、人生を再生させていく物語です。妻の親友もバス事故で一緒に亡くなり、その親友一家が、今回「ママがいなくなった家庭」として、注目したいポイントです。
ママを突然失った家庭に起こる出来事、最初の災難が、「アナフィラキシーショック」。親友一家には、小学生6年生の男の子、保育園に通う5歳の女の子がいて、女の子はエビとカニのアレルギーでした。
お父さんは知らずに食べさせてしまい、「アナフィラキシーショック」に。女の子は、急きょ病院に運ばれることになってしまいます。
保育園の送り迎えや受験の準備など、ママがいないといろいろな問題が
第2の災難は、「保育園のお見送り&お迎え問題」。親友一家は、パパが超距離トラックの運転手で、仕事に出たまま数日戻らない日もたまにあります。それまでは母親が送り迎えをやっていたわけで、いなくなったとなれば、お迎えが小学生の男の子の仕事になってしまいます。そして迎える第3の災難が「中学受験の問題」。男の子は、妹の世話や送り迎えが忙しく、塾を休んでしまったり授業に遅れてしまったりで、目標にしていた中学受験が難しくなってきます。
パパも、一番の頼りだったママが突然いなくなり、心にぽっかり穴が開いてしまったかのような状態に。
精神的なダメージが大きく、目の前の家族の状態を冷静に受け入れることができていません。
子どもの体や病気、保育園のことをパパと共有しておく
ほとんどの家庭では、子どもまわりのことはママが主導権を握って、パパが知らないことも多いのではないでしょうか。さしずめアレルギーぐらいは知っていても、食事のときに、「エビかカニが入っていませんか?」と確認するのは、ほとんどがママの役目だと思います。普段から、子どもの体質やかかりやすい病気、病気になったときにどう対処するのか(かかりつけ医はどこか)を共有して、医者通いなどはたまにパパにお願いするなど、お互いが同じ立場から、子どもの体について知っておくことが大切になります。
保育園の送迎問題も同じ。普段は園の送迎はママに任せきりだとしても、パパが代休の時や朝夕の時間に余裕がある時は、代わりに送り迎えをしてみて、「登園時間はいつまでか?」「最大何時まで預かってくれるか?」「準備するものは?」「どんなふうに受け渡すのか?」など、送り迎えや園についての基本的なことを共有することも大事です。
受験に体する備えは、貯蓄が一番の安心
ママ不在が受験に与える影響は、経済的・時間的な制約ができてしまうことです。小学校高学年となると塾には1人で通えますが、ママがいなくなることで、お弁当を準備する負担や、兄弟の世話をする負担がかかってしまいます。
こんなときのために、近隣に住む祖父母たちに頼れるよう上手な関係作りや、祖父母が近くにいない場合は、送り迎えなどがお願いできる「ファミリーサポート」などのシステムについて調べておくことも必要かもしれません。
また中学受験は、ある程度お金がかかるもの。ママがいなくなった家庭では、パパも多少仕事をセーブしなくてはいけないので、収入面にも影響は出てきます。そうなったときに困らないためにも、普段から定期的な貯蓄も必須だと言えます。
妻として見られたくないものは、日常的な断捨離と整理整頓を
ここからは、「妻」としてやっておくべきことについてです。映画の中で、主人公の小説家の男性は、亡くなった妻の遺品のスマートフォンから、あるものを見つけてしまいます。「もう愛していない。ひとかけらも」というメッセージでした。
妻が誰宛に書いたものか、もしくは自分自身に問いかけたものか、真意は分かりませんが、これを見た男性は自分宛に書いたものと思い、激しく動揺してしまいます。
自分が亡くなった後に、スマートフォンはもちろん、手帳や日記、手紙など、いろいろ詮索され、自分の思いとは違った形で人を傷つけたり、ショックを与えたりこともあるかもしれません。そんな悲しさ、もどかしさを招かないためにも、プライベートで見られたくないものは、必要なくなったら随時捨てたり、整理したりすることも大切。そういう意味でも、断捨離や整理整頓を、定期的に行うことは意味があるのかもしれません。
家族そろって過ごす幸せ、家族の愛を再確認できる映画
映画『永い言い訳』を、ママ的、そして妻的目線から紹介しましたが、この作品は、ママ世代にとても突き刺さる映画だと思います。日々家事や子育てに追われているママは、まわりから評価されたり、今の暮らしの幸せというものを実感できることが少ないかもしれません。この映画を通じて、人の死によって、もう元に戻すことはできない生活を振り返りながら、新たな人生を進むことの大切さ、愛することの美しさを改めて再確認できると思います。そして、家族そろって過ごせることのささやかな幸せや、何も起こらない普通の生活がいかに素晴らしいかを実感して欲しいです。
また、主人公を演じる本木雅弘さんの魅力も見どころのひとつ。実生活では子育て経験がありながらも、劇中では初めて子どもに触れる不器用な小説家を演じています。子どものような一面を残した愛嬌たっぷりかつダメさのある男性役が、はまり役とも言えます。妻が死ぬ前と後で、姿も内面も大きく変化しますが、どちらもとても魅力的でセクシーです。
1人はもちろん、ママ友同士で、夫婦で観るのもおすすめの映画『永い言い訳』を、ぜひチェックしてみてください。
『永い言い訳』
原作・脚本・監督:西川美和
出演:本木雅弘、竹原ピストル、深津絵里、池松壮亮、黒木華ほか
配給:アスミック・エース
10月14日(金)より全国ロードショー
http://nagai-iiwake.com
©2016「永い言い訳」製作委員会
<文・写真:フリーランス記者武田 由紀子>