シリーズ 専門家にきく! 映画『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督にインタビュー 子どもたちに伝えたい“おっこ”が大切にする「もてなしの心」
と思ったんです。そう思ったら居ても立ってもいられなくなって、夏休みに自分で描いた絵を、とある制作会社に持っていって、「アルバイトさせてください!」って直談判したところ意外にあっさり「いいよ、やってみる?」と受け入れてくれたんです(笑)。そして、そのままアニメ業界に入りました。
――好きなことを仕事にして生活していくというのは、なかなか大変ではなかったですか?
高坂:どんな仕事でもつらいことがあると思います。でも、好きな仕事ならつらくてもがんばれるし、いや、がんばれないことも多いですが、悔いは残らないと思っているんです。
たしかに、好きなことを仕事にして生きていくのは大変かもしれません。でも、ぼくは「子どもがやりたいことがあるならやらせる」というスタンスも大事なのではないかと思います。親がいくら助言しても、学校がいろいろ教えても、自分が気づかないと、どんなことも実は結ばないと思うんです。
自分がやりたいことなら積極的に考えるでしょう?本当の勉強はそこからです。
――今の子どもたちを見ていて、感じることはありますか?
高坂:今は、世の中の基準からはみ出ない人を育てるような前時代的な風潮がまだあるようですが、はみ出ている人間ほど、いいアイデアを持っているような気がします。アニメ業界に身を置くぼくからしてみると「ふつうじゃない」と言われる方が価値を感じます。
映画で当たり前のものを見せられてもおもしろくないわけで、「そういう見方があったんだ!」という意外性や驚きが必要なんです。世の中とは違った目線が、ぼくらにとっては大事なんですね。
そういう感性を、それぞれの特性に合わせて育んでいくという世の中の方が、みんながのびのびと成長できて、結果的に社会全体が良い方向にいくのではないかと夢想しています。
――わたしも、つい子どもに対して心配してしまうのですが、子どもがそうしたいのなら人と違っていても「黙って見守る」という寛容さが必要だということでしょうか。
高坂:寛容さは必要でしょう。
助言も必要でしょうが親のリテラシーが問われます。「ふつうは、これがルールなんだから!」などという言葉も聞きますが、ルールを作っているのは人間で、その人間は間違うことがある。ぼくは「ふつう」という言葉は、疑ってみたほうがいいと思っているんです。
思春期には、超えなければいけないハードルがある
――“おっこ”は事故で両親を失い、旅館でおかみの修業をするという、ある意味「ふつうではない」