子育て情報『現役医師が語る、発達障害と医療の望ましい関係とは?―児童精神科医・吉川徹(1)』

2016年9月29日 17:00

現役医師が語る、発達障害と医療の望ましい関係とは?―児童精神科医・吉川徹(1)

平成28年度からは、地域のかかりつけ医を対象とした研修も全国規模で始まろうとしています。専門の医師が集まる学会などでも養成のための取り組みが続けられています。

しかし現時点でもニーズの急増に対応できる新たな医師の養成や医療機関の整備は、充分に追いついているとは言えない状況です。まず医療による支援そのものが、他の領域に比べて極めて高コストな構造になっており、専門家の養成や維持には社会に大きな負担がかかることから、供給できる医療の内容や医師の数そのものに厳密な制限がかかっています。

そして専門医は促成栽培が難しく、一人一人を手取り足取り教えていく必要があります。そのためそもそも教える立場の医師の数が増えないと、養成できる若手の数も制限されてしまうのです。また、子どもの心の診療自体、構造的に赤字体質であり、なかなか若い医師にとって魅力のある領域になりにくいなど、様々な背景があるのです。


本来あるべき支援と、医療信仰とのあいだに存在するギャップ

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10567000227

残念ながら現在の医療の水準では、種々の発達障害の根本的な治療法は見つかっていません。
逆に言えば、根治するために必ず医療を受診しなければならない、という状況ではないのです。

これほどの数の多い、発達障害がある子ども達、大人達の支援は、本来は普段の生活の場所、そこから近いところで提供されなければなりません。医療のような日常の暮らしと切り離された場所での対応には、はじめから限界があります。

一方で、本人やご家族、他の領域の支援者からはときに医療に対して、万能的、魔術的な期待が寄せられます。また逆に医療領域の支援者には、他の領域の支援者に対する根強い不信があることがあり、良心的な医療者ほどその不信を隠さず、必ず医療機関にかかっておくべきだと主張することもあります。

この背景には、そもそも現在の発達障害の概念の多くは医療から出発しており、黎明期である1960年代〜70年代には医療以外の支援が極めて乏しかったこと、現在でも他の領域の支援で支えきれなかったこじれたケースが医療機関を受診する場合が多いことなど、様々な理由があるのですが、現在の視点から見るとそれは不幸なことであると思います。

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