2017年1月27日 15:00
自閉症の息子は、他人に興味がないと思ってた。ある運転手さんとのお別れで…
昨年の12月、最後の通院の日は雨が降っていました。
病院を出ると、ぽつんと1台だけ停まったタクシーが目に留まり、長男と共に走りよりました。そこにはいつものように、サンタの運転手さんがいてくれたのでした。
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「雨で滑るから足元に気をつけてください」と細やかな気遣いをしてくださり、最後の通院日にこのやさしい運転手さんに会えてよかった、と嬉しくなりました。
帰りの車の中、私は運転手さんにこの7年間お世話になったことにお礼を言いました。すると運転手さんは照れくさそうに微笑まれながら、もう今年でタクシー運転手は引退することを話してくれました。
病院は変わってもどこかでまた、偶然乗り合わせることもあるかもしれない-そう思っていたのに……もうこの運転手さんと会うことはないのだとわかると一抹の淋しさがあり、タクシーの中はいつもと違う雰囲気に包まれていました。
今まで運転手さんに関心がないと思っていたのに…。長男の心に届いていたもの
自宅に到着すると運転手さんもタクシーから降りて下さり、私は最後のお別れの挨拶を交わしました。
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その時のことです。車内ではずっと黙って窓の外を見ていた長男が突然、ありったけの大声を出したのです。
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とても驚きました。
重度の自閉症である長男が、今日で最後だという私と運転手さんの会話を理解しているとは正直思っていなかったから。
まして今まで自分から他人に声をかけたり、お礼の言葉を言う事は今まで一度としてありませんでした。あるいはいつもと違う悲しい空気を察したのかも知れませんが、必死に声を振りしぼった長男の姿には、今まで助けてくれた人への感謝の気持ちが滲んでいました。本当はずっと、抱き上げてくださった手や、優しい言葉が長男の心に届いていたのでしょうか。私は目頭が熱くなりました。
運転手さんも驚いたように長男を見つめ、バイバイと小さく手を振ってくださいました。
あの瞬間、一生懸命思いを伝えた長男の必死な姿を、私はずっと忘れないだろうなと思います。
「会社員だけどお母さんだから。お母さんだけど会社員だから。どちらも放り出せない葛藤」まぼの“働きながら子どもを育てる”ということ Vol.11 | HugMug