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発達障害がある子どもの歯科治療、事前に気をつけるポイントは?歯医者で行う予防や治療、障害者歯科についても解説【専門家監修】

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歯医者さんでの歯の基本的な予防・治療方法


歯医者さんの主な役割としては「検診、予防」「虫歯治療」「歯周病治療」などがあります。

そもそも口は食べ物から栄養を取るための入り口です。食べたものをかみ砕き、だ液と混ぜてさらにその奥の消化器官へと送り込むのが口の役割となります。ここで消化活動はすでに始まっているのです。また、食べる飲むだけでなく、おしゃべりするためにも歯と口はとても大切な器官です。

また、発達障害がある子どもの歯科治療についての悩みを抱える保護者の方は多くいます。パニックになったり暴れてしまい安全に治療が難しい場合もあるのではないでしょうか。

このコラムでは、歯科治療で行う内容から、子どもが治療を受ける際にできる工夫、発達障害がある子どもの歯科治療についてまで解説していきます。


まずは定期検診で、虫歯になりそうな部分はないかをチェックして予防します。虫歯ができてしまうと、自然治癒が難しくなるため、できるだけ虫歯にならないようなケアをすることが大事です。それでも完璧にできない場合があるので、3ヶ月おきくらいのペースで検診に通うことができれば、虫歯を早期に発見でき、深く削るほど治療せずにすませることができます。

検診だけでなく、積極的な予防をすることもできます。それがシーラントやフッ化物の塗布です。生えたばかりの歯は、歯の表面のエナメル質が未熟で、虫歯になりやすいものです。そこで、特に奥歯のような溝が深く、複雑な形の歯では、汚れがたまりやすい溝をシーラントで埋めるという予防方法があります。また、フッ化物を歯の表面全体に塗ることで、弱い歯の表面を強化することができます。


また、歯磨きの方法も教えてくれます。日常の口腔ケアはとても大切です。歯並びや虫歯や歯肉炎の程度など、口の中の状態は個々に異なります。個人にあった歯ブラシや歯磨き剤、洗口剤などを適切にアドバイスしてくれます。

虫歯ができてしまった場合は、もちろん治療をします。虫歯は口の中にいる虫歯菌によって浸食された部分なので、それ以上浸食が広がらないために削り、削ったところに詰め物をする、という治療をします。シーラントと違うのは、削れた歯の部分に合うように調整した詰め物をとれないようにかぶせるということです。

表面が少し浸食された程度ならまだ治療は容易ですが、奥深いところまで浸食が達してしまった場合は、神経に触れてしまうことも。
こうなると神経を抜いて被せ物をするという治療になります。さらに歯が根元まで崩壊するほどに虫歯が進行してしまった場合は、抜歯することもあります。

ただ、特に乳歯の場合は永久歯が生えてくるスペースをなくしてしまうことになるので、抜歯は歯列の状態にも大きく影響します。抜歯は「最後の手段」なのです。

口の中のトラブルは歯だけが問題なのではありません。歯茎が炎症を起こす歯肉炎や歯を支える骨(歯槽骨)が壊されてしまう歯周病なども治療します。

歯医者さんを怖がる子どもを歯医者に連れて行くときにできること


歯医者さんでの治療を、なぜ子どもは怖がるのでしょうか。それは、見たこともない道具を口の中に入れられて、大きな音がして、麻酔の注射もチクッと痛くて、麻酔をしたとしても振動は伝わるからでしょう。
体の中でも敏感な口の中を触られること自体、怖いことなのです。ではどうしたら、嫌がる子どもを歯医者さんに連れて行くことができるでしょうか。

まずは、歯医者さんは「痛くない、嫌なことをされない」場所だということを、子どもに覚えてもらいましょう。そのためには、虫歯になってから歯医者さんに連れて行くのではなく、予防として検診を受けることから始めることです。検診を受けるだけなら実際痛いことはしないので、「歯医者さんに行くのは痛くない」ということを経験できます。最初に「歯医者さんは怖いところではない」という安心感を子どもが覚えることが第一歩です。

乳歯が生え始めてから2歳ころまでに、痛くない検診からスタートしましょう。このころはまだ、保護者のそばが何よりも安心できる安全地帯です。
歯医者さんと相談して、おすわりができる子どもでも、一人で診察台に乗せるのではなく、保護者が抱っこして一緒に座るなどの配慮や工夫をしましょう。ママやパパがついていれば安心、ということが大事なので、このときに保護者自身が緊張した表情にならないように気をつけましょう。

だんだんに自分の周りの状況が分かる3歳ごろからは、歯医者は怖い場所という印象付けをしないことがまず大切です。嫌がりそうだからと、「公園に行こう」など嘘をついて連れて行くと、不信感につながります。嘘は言わないようにしましょう。

行く前には、歯医者さんは楽しいところだと伝えている絵本や動画を見せて、心の準備をしてあげましょう。また、タイミングも大切です。午前中の機嫌のいい時間帯や、お昼寝から目が覚めて落ち着いたときなど、子ども自身のコンディションを優先しましょう。
空腹時や眠いときなどは避けましょう。

ここで大切なのは、連れて行く大人の態度と表情です。保護者自身も歯医者に苦手意識がある場合、緊張感が伝わってしまいますし、無意識に少し怖い顔になってしまうこともあります。子どもを公園や児童館に連れて行くときのような気分で対応したいところです。

そして、検診や治療が終わったら、「頑張ってお口を開けられたね!」「歯みがきしていたから虫歯がなかったのね。すごいなぁ、さすが!」など、たくさん褒めてあげましょう。もし、行くまでぐずって泣いていたとしても、歯医者さんに行けた、ということだけでも褒めてあげてください。次も頑張ろうという気持ちにつながるはずです。


発達障害のある子どもは、感覚過敏があることで歯磨きを受け入れにくいことがある


発達障害のある子どもの場合は、さまざまな特性から歯を磨くのを嫌がる傾向があるために、虫歯になりやすく歯医者さんに通う頻度も高くなりやすいということがあります。

こだわりの強さから歯磨きすることを拒否したり、動き回って安全に歯磨きすることが難しかったりします。また、感覚過敏があるために口の中に歯ブラシが入ることを拒んだり、歯を磨くことが健康のために必要であることがうまく理解できなかったりする場合もあります。

甘いものなど虫歯になりやすい食べ物ばかり食べるなどの偏食や、食事時間以外にもだらだらと食べてしまうことも虫歯の原因になります。発達障害のある子どもの場合は、一時的に何かをがまんさせる代わりにご褒美として子どもの好物を与えるということもあるかもしれません。こうしたことから常に食べ物のカスがお口の中に残っている状態が虫歯になりやすい口腔環境にしてしまうことがあります。

発達障害のある子どもが歯医者に行くときに気をつけたいこと


発達障害のある子どもの場合、歯医者さんに行くことを受け入れられるようにするには、行く前からの準備が必要な場合があります。

発達障害のある子どもの場合、何が起こるのか分からない、何をされるのかが分からないという状況はとても不安になります。まずは、歯医者さんは怖いところではないことを伝えてあげましょう。好きなキャラクターが歯医者さんに行く話や、歯医者さんは楽しいと伝える絵本を読んであげるのが分かりやすいと思います。

また、歯医者さんにはたくさんの道具があるので、どんなものがあるのかを説明することも良い方法です。子どもを診てくれる歯医者さんは、内装なども楽しげな雰囲気にしつらえているところもあるので、怖い場所じゃないよ、ということをよく話して伝えましょう。

子どもが歯医者さんについて知っておくようにする一方で、歯医者さんにも患者となる子どもについて、情報を伝えておきましょう。診察室に入るときだけでなく、予約したときにも話しておくと安心です。どのような方法でコミュニケーションをとると良いのか、どういうことをいやがるのか、どうすると落ち着くのか、保護者がそばにいてできることなども伝えます。

発達障害のある子どもの場合、見通しが立たないことでとても不安になることも多いです。何時ごろにどこに行くのか、何時ごろに終わるのか、ということと同時に、歯医者さんに行ってどんなことをするのか、そうすると歯や口の中がどんな風にきれいになって元気になるのか、ということを分かりやすく伝えてあげましょう。

大切なのは、歯医者さんは怖いところという先入観を保護者自身がもっていると、子どもへの伝え方も変わってきてしまいます。健康のために大切なことをしてくれる場所というイメージに気持ちを切り替えて、説明できるといいですね。

障害者歯科(スペシャルニーズ歯科)ってどんな治療をしてくれるの?


一般的な小児歯科では、どうしても治療が難しい場合もあります。そんなときは障害のある子どもについて、よく分かっている障害者歯科が味方となります。障害者歯科は、次のような患者さんを診てくれる場所です。

・待合室や診療室で待てない
・知的な遅れや発語が難しいために、歯の痛みを自分で訴えられない
・身体の不自由さや、身体のこわばり・緊張から、治療を受ける姿勢に制限がある
・病気や、内服している薬のため、医学的管理が必要である
・口に治療器具などが入ると、吐きそうになったり、実際に吐いてしまったりする
・歯医者さんに対して極度の恐怖感がある
・歯磨きが自分で上手にできない
・心身の発達の遅れや病気によって、食べ物を口から安全に食べたり飲み込んだりすることが難しい
こうした子どもについての知識があり、どう対処したらいいかについての情報をもっているのが障害者歯科です。

実際に障害者歯科で行われる検診や治療は、一般的な小児歯科とはどんなことが違うのでしょうか。一番特徴的なこととしては、障害についての専門的な知識をもち、理解がある人が治療してくれるということです。患者さんの障害について保護者からの情報を聞き、どう接したらいいかの情報をもって、相互理解を基本にして治療にあたってくれます。

たとえば知的な遅れがある場合には、ことばで説明するだけでなく、絵や写真、絵カードなどを使って説明をしたり、予想がつかないことを嫌う場合には、治療に使う器具や部屋についての説明を丁寧にしてくれたりします。

感覚過敏のある子どもで顔に触られること自体をいやがる場合には、いきなり治療を始めるのではなく、少しずつ体に触れるようにして慣れていくような方法(脱感作)をとるといった、ノウハウも障害者歯科にはあります。また、イヤーマフの準備があったり、患者さんの敏感さがどこにあるのかを、保護者からも聞き取ったりして治療に進みます。

いつもと異なる状況や周囲の大きな音などが苦手な子どもには、個室を使用するなどいつも同じ環境になるような配慮があったり、歯科衛生士も同じ人が立ち会うなど、できる限る同じ環境での治療ができるような配慮があります。

治療のときの姿勢に制限がある場合には、補助器具を使うことのほか、暴れてしまうなどで十分な協力が得られない場合には鎮静剤などを使用することや、場合によっては全身麻酔で治療を行うこともあります。

歯と口の中の健康ケアは、悪いところができてしまったら取り除く、ということではなく、普段の生活の中で虫歯や歯周病にならないようにケアしていくために、家庭での予防が大切です。ただ、発達障害がある場合などには、こだわりが強いことや、食習慣の問題から、家庭での対策をどうしていいかが分からないこともあるでしょう。

障害者歯科では、治療をする際に必要な障害についての知識や情報だけでなく、普段の生活についても障害のある患者さんに特化した口腔ケアの指導もします。それは歯磨き以外にも、虫歯になりにくい食べ物の形状、食べさせ方、食事のリズムについて、食べるときの姿勢についてなど、さまざまな視点から歯の健康を守る日常ケアについてと多岐にわたります。こうしてケアをしていても、家族だけではケアしきれない部分、みがききれない歯のクリーニングや口腔のケアを行うのが障害者歯科です。

まとめ


障害のある子どもが歯医者さんに通うときには、「歯医者さんは怖くない」ということを印象付けてあげてください。家庭でのケアだけで歯と口腔の健康は保ちきれない場合、安心して頼れる障害者歯科をかかりつけ医にして、二人三脚でケアしていくようにしましょう。

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