「漢字」は「ひらがな」より分かりやすい!?子どもたちを長年指導した中で見えてきた「文字」と「イメージ」とのつながり
というわけで、イメージがしやすい「蟻」の漢字のほうが覚えやすかったというわけなのです。
書くことと読むこと
書くことと読むことをごっちゃにしてしまうと「漢字は難しい」となってしまうかもしれません。たしかに漢字は書くのは難しいかもしれませんが、読むという面から見ると複雑な方が特徴があって分かりやすかったりします。
具体的な意味もあり、それぞれの特徴がある漢字は印象深く残ります。
私たち大人でも“薔薇、鬱、麻雀、挨拶、葡萄、推薦図書”などは、すぐには書けない人も多いと思いますませんが、読むことはできるのではないでしょうか。
実際に、私が接した子どもたちは「蜜柑」「林檎」「怪獣」「救急車」「餃子」「苺」「兎」「象」「豚」「宇宙人」などの具体的な概念を表す漢字は数回見せただけで覚えてしまうことが多くありました。
多くの幼稚園、保育園では、子どもの名前をひらがなで下駄箱に書いていたり、それぞれの子どものマークを決めてげた箱などに貼っている園もあります。
でも、マークではなく漢字にしてみると、おそらく多くの子どもたちは自分や友達の名前の漢字を覚えてしまうのではないでしょうか。
障害がある子どもへの指導で見えたこと
私は長年、障害のある子どもたちの指導にも携わっていました。
6歳から24歳まで指導をした知的障害がある子どもは、「蜜柑」「葡萄」「卵」「餃子」「牛乳」「焼肉」「象」「猫」「冷蔵庫」「風呂」の漢字は驚くほどよく覚えました。中華料理が好きだったのですが「冷やし中華」「餃子」「麻婆豆腐」「焼売」の漢字もあっという間に覚えてしましました。
けれども、ひらがなで書かれた自分の名前はなかなか覚えることができませんでした。
障害がある子どもに指導すると何がやさしくて、何が難しいのかを教えられる場面が多くあります。具体的で想像しやすい単語であれば、一見読むのが難しそうな漢字で書かれていても理解しやすいのですね。
執筆/立石美津子
(監修鈴木先生より)
自閉スペクトラム症のあるお子さんは漢字を「図形」ととらえています。
ですから書き順にこだわらず、下から上に書いてしまうことも珍しくありません。
私たちがハングル文字やアラビア文字を図形のように見てしまうことと似ているかもしれません。
一方、SLD(特異的学習症)のお子さんは、黒板に書いてある「ゆきだるま」