子どもの工作が “失敗作” でも、親はアドバイスしてはいけない
「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトに、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。その代表理事・嶋村仁志さんは、子どもが子どもらしく遊び、心身ともに健全に成長できるようにと、遊びを大事にする大人を増やそうと奮闘しています。そんな嶋村さんは、遊びが子どもにもたらしてくれるもっとも重要なものは、「自主性と安心感」だと語りますが、それを得る機会を奪われている子どもも少なくないのだそう。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)
冒頭写真提供:嶋村仁志
遊びで子どもが得るのは「自主性」と「安心感」
遊びのなかで子どもが得られるものとしては、まず「体力」が挙げられるでしょう。最近は、体力は「行動体力」と「防衛体力」にわけて考えられています。行動体力とは、行動を「起こす」筋力などの能力、行動を「持続する」持久力や柔軟性などの能力、行動を「調整する」素早さや器用さ、バランス感覚などの能力のことです。
一方、防衛体力は、寒さや暑さ、振動、化学物質など「物理化学的ストレス」に対する抵抗力、細菌など「生物的ストレス」に対する抵抗力、空腹や口の渇き、疲労といった「生理的ストレス」に対する抵抗力、不快、苦痛、恐怖など「精神的ストレス」に対する抵抗力が挙げられます。
これらが強くなれば、当然、子どもは健康に育つと期待できます。
とはいえ、わたし自身は、遊びが子どもにもたらすものとして、なにより「自主性」と「安心感」が重要だと思っています。
遊びとは、自分がやりたいと思うことを主体的にやること。やりたくないことは絶対にやらなくてもいい。遊びとは、そういう「自主性」の塊なのです。でも、いまの子どもは自主的に遊ぶ権利を奪われつつあると見ています。幼い子どもでも、毎日がスケジュール漬けになっていることも少なくないですよね。
何時に起きて保育園に行き、午前はなにをしてお昼ご飯を食べて、お昼寝をして迎えに来てもらってあれこれ習い事をして、家に帰ったらご飯を食べてお風呂に入って歯を磨いて……。やることもやる時間も決まっています。
そういう生活のなかで、子ども自身が「いま」を決めている時間ってどれくらいあるのでしょうか?本来、それは遊びの時間として残されていた部分です。そういう時間を積み重ねて大人になれば、たとえお金持ちにはならなかったとしても、本人が面白そうだと思ったことは積極的にやるし、ひとりでやるのは難しいことなら遊びのなかで培った力によって他人を頼って協力することもできる。