テレビ、ゲーム、インターネット。メディアとの付き合い方と、身につけたい能力「トランスリテラシー」
たとえば本に関しては、私はどんなジャンルが質が良く、どんなジャンルが問題含みなのか、かなりはっきり知っています。ですから「本を読む」と子供が言ったとき、「何を読むのか」の方に意識がまずいきます。子供の教育に関心がある親御さんの多くはそうなのではないかと考えます。
けれどもインターネット上の動画チャンネルについては、私は本当に無知です。2言語話者の子供を育てていく上で、ネット上の読み聞かせ動画はとても便利でしたから、ひょっとしたら似たような教育観を持っている親御さんよりは動画に対してオープンかもしれませんが、それでもどのような動画チャンネルが質が良く、どのようなチャンネルが問題含みなのか、把握しているとは言えません。
メディアとの付き合い方を、子供は学ばなくてはならない
けれど、一つ言えることがあります。好むと好まざるとにかかわらず、新しいメディアは、やがて社会における表現の主流になる可能性が高いですし、そういったメディアとの付き合い方を、ある時点で子供達は学ばなくてはならないだろうということです。
今すぐであるかもしれませんし、もっと先のことかもしれません。
けれど、どこかで彼らは、情報収集するにあたって、新しいメディアと向き合わなくてはならなくなるはずです。
新しいメディアの登場に対して、今まで通りの識字教育では不十分なのではないか、という問題提起は、もうかなり前になされています。
何冊もの本が日本語にも翻訳されている児童文学研究者、ピーター・ハント教授は、2002年の段階ですでに、新たなメディアの形は児童小説の物語のあり方そのものを変えて来ていると指摘しています。学校での識字教育がそれに対応できているかについて、彼は疑念を呈します。
これからの子供達に求められている「トランスリテラシー」とは
同様に2013年に児童文学研究で国際グリム賞を受賞したキンバリー・レイノルズ教授も、文章だけに限らず様々なメディアを包括的に理解することのできる能力、つまり「トランスリテラシー」こそが、これからの子供達に求められているのではないか、と提言しています。メディアの壁にとらわれず、必要な情報を収集し、様々な形で発信していく能力と言い換えることもできるかもしれません。
細かい専門的な議論にはここでは立ち入りませんが、現在の子供達を囲むメディアと物語の環境は、たしかにある意味、様々なメディアの特性を子供と考えるのにとても適していると言うことはできます。