全国的に暑くなることが予測されている夏に向けて「異常気象と気候変動の関係と子どもの健康問題」についてセミナーを開催
《気候変動による子どもへの健康被害について私たちが知るべきこと》
続いて、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 公衆衛生学分野にて、社会疫学、ライフコース疫学を通して子どもを中心に社会環境の健康影響の研究を幅広く展開する藤原 武男先生が、気候変動、また異常気象などによって実際に子どもの健康にどのような影響を及ぼすのかについて発表しました。
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野 藤原 武男 教授
・気候変動の健康影響を考える時に大事な視点(小タイトル)
まず気候変動の健康影響を考える時に、研究者あるいは医師でも間違いやすい、思わず忘れてしまうような視点を2つお話ししたいと思います。
1点目は、気候変動による影響は全員に与えるものだということ。もう1つは、直接的な影響と間接的な影響があるということです。
例えば子どもの受動喫煙のリスクについて考えてみたい場合、母親の喫煙者の割合が10%で、非喫煙者の子どもたちも大体10%ぐらいで喘息になるとしましょう。母親がタバコを吸っていて受動喫煙をしてしまった子どもの喘息発症率が2倍になるとした時、その影響を受けるのは、喫煙者の母親を持つ10%の子どもたちだけです。つまり1,400万人の子どもがいたら140万人の子どもに関わる話になります。さらに、全体から見ると受動喫煙によって子どもが実際に喘息になるのは1%でしかないわけです。
つまり、1,400万人の子どもがいたら14万人が発症するということです。
気候変動の影響
しかし、気候変動は全員に影響します。何をしていても地球上に生きている限り、暑い夏を経験するわけです。
例えば夏の1日の平均気温が27度であった場合の喘息の割合が10%だとしましょう。平均気温が1度上がって28度になった場合に、よく論文で1度上がると喘息のリスクが1.2倍上がると言われています。1.2倍なんてそんなに大したことではないと思うかもしれませんが、1,400万人の子どもたち全員に影響します。つまり、1.2倍(12%)は、人数にすると1,400万人の子どもに対して28万人が喘息を発症することになります。
・気候変動は「原因の原因」
もう1つの視点は、直接的な影響と間接的な影響があるという点です。
間接的な影響とは、気温が高くなることで花粉やカビが増えていき喘息になる、気候変動によって亜熱帯にいるような蚊が日本にやってくることで起こる健康への影響や、環境の変化によって農作物が減収して採れるものがなくなってくると農薬がたくさん使用されることになり、それに暴露する機会も増えてくるということです。