2018年6月10日 22:00
スクリーンが切られる事件も! 映画業界元“中の人”が描いた一冊
作中に出てくる、フィルムを違う缶に収めてしまう“缶違い”やスクリーンを切られる事件はほぼ実話です(笑)」
また、咲子が体験する女性総合職に対する偏見や嫌みも、現実にあったことなのだとか。
「当時の働く女性のなかには“男性社会にお邪魔させてもらっている”という感覚の人がいました。今は女性の働く環境も改善されましたが、根底は変わらないとも感じます」
また、女性の先輩はふたつに分かれていたという。
「後輩女性を叩いて押しつぶそうとする人か、引っ張ってくれる人か。今思うと、それは余裕があるかないかの違いでしたね。私も岩波ホール総支配人だった高野悦子さんに大変お世話になったんですが、そうした実績のある方は厳しく優しく教えてくれたというか。今気づいたのですが、麗羅には高野さんのような人が投影されているかもしれません」
その後、50代となった咲子らそれぞれの人生模様は?人間ドラマとして、さらに映画や人の働き方を振り返る平成史として読ませる一作。
ふるうち・かずえ作家。
1966年、東京都生まれ。映画会社勤務ののち、「快晴フライング」で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞、’11年に同作でデビュー。