くらし情報『耳の痛い“ボーイズトーク”展開も…最後は「泣ける」恋愛小説』

2016年1月31日 13:00

耳の痛い“ボーイズトーク”展開も…最後は「泣ける」恋愛小説

だから自分が男の本音を書こうと思いました。車のなかですることといったら自然と会話しかないから、ボーイズトークにちょうどよかったんです」

と言うように、嫌いな女について男性陣の率直な意見が盛り込まれていたりして、女性読者は耳が痛いところ。また、旅の全行程が描かれるのではなく、あくまでもそれぞれの旅の車を走らせている場面だけを切り取っているところには、定点観測的な面白さが。ただ、そんなさまざまな遠出の道中でも、戸倉の心のなかには琴美がいる。好きな人が病気とはずいぶんストレートな設定だが、

「山田詠美さんの『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』の文庫解説を書いた時に実感したんですが、山田さんは堂々と、恣意的に、大切な人が死ぬことを書いているけれどまったく安直じゃない。要はどう書くかなんだと気付いたんです」

戸倉の心に秘めた思いはどこに辿りつくのか。第一話でミントタブレットを購入した時の会話が、終盤に効いてくる。やはりこれは、「泣ける」小説なのである。


◇若者に交じり教習所に通い、免許を取得した戸倉。仲間たちとさまざまな車の旅へ出向く一方、気になるのは病に臥した琴美のことで…。リトルモア1200円

◇ながしま・ゆう作家。

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