2021年8月11日 20:10
投資、怪しげな独自通貨…お金に翻弄される人々を描いた、羽田圭介『Phantom』
それもあって5年以上中断していました」
だが、社会やお金をめぐる価値観は様変わりした。新たに、怪しげなオンラインコミュニティや、ムラ内の〈シンライ〉という独自通貨など、現実でも見聞きするモチーフを投入したことで、生きたお金や死んだお金という考え方を提示し、読む人の価値観まで揺さぶってくる。
「いま味わう喜びを先送りにしてお金を貯め、お金さえあれば幸せになれると思っている華美。彼女の恋人の直幸は、そんな華美の価値観を笑うけれど、彼自身は(オンライン)コミュニティにのめり込み、お金などなくてもつながりだけでどうにかなるという危うい価値観にハマっていく。両方とも極端ですよね」
終盤は、傭兵経験のある男性たちまで登場。何を言っているかわからないかもしれないが、怒濤の展開の面白さは保証する。
「僕自身も、書きながら考えましたね。僕は何でも自分でやりたがるところがあって、動画の編集やマネジメント…書く以外の仕事も自分でやってしまいがちなところがあった。
プロに頼るのは、生きたお金の使い方だなと思うように変わりました」
『Phantom』自分の労働の代わりにお金を生み出す〈分身〉の危うさや、作中で象徴的に登場する車〈ファントム〉。