くらし情報『“返還目前の香港”の空気感をリアルに描く 岩井圭也の小説『水よ踊れ』』

2021年9月6日 21:10

“返還目前の香港”の空気感をリアルに描く 岩井圭也の小説『水よ踊れ』

「ルーフトップスラム(天臺屋)、ケージハウス(籠屋)など、作中に登場する香港の建築事情は、私自身も調べ直して大きな衝撃を受けたことですね。香港の階層を端的に可視化している。なので、主人公が事件をめぐってただ観察するお客さんであってほしくなかった。そこで、和志にもマージナルな要素を宿命づけることで、香港の外と内、両方の視点を持てる人物になってくれるのではないかと考えたんです」

少しずつ暴かれていく真相も見事だが、それ以上に、保釣(ほちょう)運動が高まりを見せていた返還目前の香港の空気感がリアルだ。その中で叫ばれていたスローガンも、物語を揺さぶる。

「私が特に好きなのは、天安門事件の記念碑〈國殤之柱(ピラー・オブ・シェイム)〉に刻まれた〈老人はすべての若者を殺せない〉という言葉なんですね。オレが力尽きても誰かが倒す。そう信じる心でもあるし覚悟だと、見たときに感動したんです。
当時の香港って、摩擦しまくっていて衝突しまくっていて、だから街中に熱が生じていたんでしょうね。その変化を追って、回想の物語から現代の香港の状況へ。いちばん書きたかった最終章へとつながった手応えがあります」

このカタルシスを味わって。

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