2021年9月27日 22:10
作詞家ならではの“刺さるフレーズ”満載!? 児玉雨子の初小説集が話題に
「誰にも~」で、思わず首肯してしまうのは、レイカ視点で描かれるふたりの距離感の捉え方や、社会や世相を斬る鋭い観察眼。たとえば、レイカと真子との関係は、ある盗撮動画がネットにアップされることによって変わっていく。
「アイドルが不祥事を起こすと『男の影響』、整形する女の子に対しては『モテたいから』というように、紋切り型で決めつけてくる。社会の文脈へのアンチテーゼというか、そこにノーを言いたかったんです」
「凸撃」でも、せまみちと金キングが次第に心を寄せほっこりしていたかと思いきや…。展開もお見事。
「現実は、こんな距離感に落ち着くことも多いのかなと。ただ、どういう顛末であれ手を取り合った瞬間があるのはすばらしいなと」
随所にちりばめられている作詞家ならではの刺さるフレーズといい、2編をつなぐ人物を登場させるアイデアといい、鮮烈なデビュー作だ。
『誰にも奪われたくない/凸撃』「編集さんとのやりとりはセッションみたいでした」と振り返る。
作中曲「ジルコニアの制服」を自身で作詞作曲、YouTubeで公開中。河出書房新社1694円
こだま・あめこ1993年、神奈川県生まれ。作詞家、作家。