2016年10月1日 08:00
ネットのディスりは永遠に残る!? 酒井順子が紫式部に“悪口”を学ぶ
しかし、知らない人の悪口であれ、他人にとっては聞いていて心地よいものではないのです。できれば
「他人の耳目が無い場所」
を、選びたい。
ではネット上での悪口は、どうなのでしょうか。ネットは今や、悪口すなわちディスり行為の主戦場となっていて、匿名性があるからこそ、過激な悪口が飛び交っている。
一人でスマホやパソコンに向かっている時、つい悪口欲求が湧き出してくるのも、わからぬではありません。しかし私のような者からすると、ネット上に悪口を書くと、それが残ってしまうのが心配なところです。個人の特定はされにくいとしても、「書く」という行為によって、自分の心の中には確実に「言う」よりも深く、その言葉は刻みこまれるのですから。
ネット上に多少の悪口を書いたとて、そんなものはすぐ忘れ去られる……という感覚もあるのでしょう。
が、それも確実ではありません。たとえば紫式部は、『紫式部日記』の中に、ライバルである清少納言に対する激烈な悪口を記しています。それは彼女の本心であったろうし、またそれが後世まで残るなどとは、夢にも思わなかったに違いない。
しかし彼女に才能があったせいで、それは千年後の今もなお、活字となって版を重ねているのです。