2021年12月6日 22:10
失踪した天才ヴァイオリニストの行方は…ティム・ロス主演の“音楽ミステリー”
重厚な人間ドラマと歴史の悲劇を魂の演奏が彩る音楽ミステリー。映画『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』をご紹介します。
1951年のロンドン。華々しいデビューコンサートの開演を控えた21歳の天才ヴァイオリニスト、ドヴィドルが忽然と姿を消す。それから35年。彼と兄弟同然に育ったマーティンは、あるコンクール会場でドヴィドルに繋がる糸口を見つけ、彼の消息を追い始める。あの日、リハーサルを終えてホールを後にしたドヴィドルに何が起きたのか。
熟年にさしかかったマーティンをティム・ロスが演じるミステリーは、ヴァイオリンの調べに彩られた重厚な人間ドラマでもある。
なにしろ、ドヴィドルはユダヤ人。ナチスが台頭するなか、才能を伸ばすべく、わずか9歳でワルシャワの家族と離れてロンドンのマーティンの家で暮らしていたのだ。第二次大戦後という時期の失踪に、彼のルーツが関わっていることは容易に察しがつく。やがてマーティンは、「歌を演奏しに行く」という彼の言葉を知るのだけれど、それにしてもなぜ、姿を消す必要が?深まる謎は、ユダヤの伝統のみならず、宗教の違いを超えて観る者の魂を震わせる深い思いへと繋がっていく。
監督は、高名なヴァイオリン職人が妻子を悼んで作った名器の4世紀にわたる旅を描き、アカデミー賞音楽賞に輝いた『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラール。