2022年3月7日 17:10
『ハケンアニメ!』のスピンオフ集『レジェンドアニメ!』 作者・辻村深月の思い
この10年でアニメを取り巻く状況も変わってきているので、当初は瞳も王子も出てこない次世代の話を書くべきなのかなと思っていました。だけどその傍らで続いてきたものを書くことにこそ、意義を感じたんです」
「ハケンじゃないアニメ」に登場するのは、『お江戸のニイ太』という30周年を迎える国民的アニメ。プロデューサーの和山は、『ニイ太』のように安定を求められる制作現場でモチベーションを保つ難しさを感じていた。そんななかOPアニメを担当することになったのが、旬の監督と目される斎藤瞳。しかし和山の過度な期待とは裏腹に、瞳は『ニイ太』をほとんど知らないことが判明。
「『ハケンアニメ!』はアニメ愛の話だと、私自身も言ってきたのですが、だからといって愛を言い訳にするのもカッコ悪い。愛情とか自分の思い出などには寄りかからない仕事のしかたを、瞳を通して描いてみたかったんです。愛を押し出して仕事をするやり方ではないけれど、作品やファンに対して敬意を持っている瞳が、長く続いているアニメの現場にゲストとして加わることで、見えてくるものもあると思うのです」
辻村さん自身は、愛と敬意の両方を持って仕事をする人であることを窺えるエピソードがもうひとつある。