2022年3月16日 19:00
殺処分ゼロの国トルコ「犬をケアするコミュニティのほうが人間的」気鋭監督が語る理由
監督私が生まれ育った香港と生活経験のあるアメリカという2つの国は野良犬を許容しない社会なので、トルコのコミュニティが法律とともに野良犬をケアしていると知ったときは私も驚きました。そのときに感じたのは、資本主義社会では何も生産しない野良犬を置いておく余地がないということ。
それだけに、いきいきとしているトルコの野良犬たちの姿は、野良犬を必要のない存在とする資本主義に対する抵抗のようにも見えました。ただ、トルコでも現大統領が路上から動物を排除しようと考えているようなので、いま彼らの置かれている立場は非常に不安定なものになりつつあるのが現状。それもこのドキュメンタリーを作りたいと思った理由のひとつでもあります。
―トルコでの半年間の撮影を経て、いま思うことといえば?
監督最初は、ペットと違って愛を受けていない野良犬がどんな生活をしているのかを追いかけようと考えていたのですが、実際に彼らと過ごしてわかったのは、すごく自由で豊かな暮らしをしているということでした。そして、私たちは野良犬がいると道徳的によくないと思いがちですが、彼らをケアしているコミュニティのほうがよっぽど人間的であることにも気づかされたのです。