2022年10月16日 18:30
「母なる大地 (Mother Earth) 」から小さな「私 (Me) 」へ…写真家・川内倫子の眼差し
今回の展示は、この体験を見る人とシェアしたいという川内さんの思いが一つの出発点となっている。
〈M/E〉では、アイスランドの氷山や風景、厳寒期の北海道の冬景色、パンデミック下で過ごした自宅やその周辺で撮影した写真を1つのシリーズにまとめた。一見、関連のない被写体を並べて、連なりで見せる手法は、第一作『うたたね』以来、ずっと用いているものだ。〈M/E〉シリーズの中でも、壮大な景色の中に身を置いて撮影した写真と、身近なできごとを丁寧にすくいとった写真が隣り合う。フォーカスの異なる2つの視点は、川内さんの中でどのように同居しているのだろう?
「極小のものから広大なものへつながっていく視点には、すごくダイナミックな宇宙観があると思います。自分がそういうものの間で生かされているのだと思うと、広大な宇宙の中にいるんだという実感がわいてくる。ミクロからマクロへの振り幅が大きければ大きいほど、この世の中の不思議というか、謎みたいなところに迫れる気がするんですよね」
宇宙から俯瞰すれば、人間もアリ同様、小さな存在。そうした存在がお互いに影響し合って生きている。
「作品を作ることを通して、自分がそれを実感したいんだと思います。