“少し変わった植物学者”は透明人間。奇妙な植物に翻弄される人間たちのドラマを描いたコミック
「物語は基本的にシーンから思いつくタイプです。たとえば第1話だと、草薙と旭が最初に出会う庭のシーンみたいに。その場面に最初から植物が登場していればそこから話を広げていくし、そうでなかったらどういう植物が出てきて、どういう展開だったらこのシーンが一番輝くのかを考えていきます」
いろんな要素を盛り込んでいるものの、主軸となっているのは人間ドラマ。幼少期の経験から寂しさを抱えてきた旭が、同じようにちょっと不器用な人たちと出会い、内に秘めた想いに触れたときに起こる、ささやかな変化に光を当てる。
「人間の細かい心情の移り変わりを描くのは、自分の強みとまでは言わないけれど、向いているかなと思っています。単にいい話で終わらないような読後感にしたいんです」
単行本では、描き下ろしとして各話の最後に、別の角度から物語を補完するショートストーリーが収められていて、読後感がさらに豊かに。
「本編で描ききれなかったこともたくさんあるので、描き下ろしを含めてようやく1話が完成しているイメージです。今後は、草薙がなぜ透明人間になったのか、過去を掘り下げていくと思うのですが、達観しているように見える彼の人間くさいところも描いていきたいですね」