観察眼と情熱に感嘆!? 精緻な“版画”の世界に導く展覧会が開催
そこで神学者が聖書の一字一句を読み解くように、1枚の葉や小さな昆虫にも神の意図を汲み取ろうとする姿勢が生まれたのです。聖書が神の第一の書物とするなら、自然は第二の書物といえるでしょう」
この時代、世界を探究することは神を知ることだった。そして世界を見たままに再現しようと、版画の技術もレベルアップしていく。
「銅版画では陰影をつけたり、油彩のタッチや水彩の淡い感じを出す工夫が凝らされ、リトグラフになるとより絵に近づくようになりました」
初期の木版画に始まり、絵と見まごうばかりの進化を遂げた版画は美しい。真剣な観察に加え、そこに神の存在を感じたいという強い願いが同居する、今の私たちにはない情熱のせいかもしれない。
15~16世紀に磨かれた想像力と観察眼。
中世ヨーロッパの自然観は主に創造主である神の存在によって形づくられていた。15世紀に入ると観察に基づき自然が描かれ始める。
『キリストの生涯注解』より一葉1482年頃刊木版・手彩色町田市立国際版画美術館蔵
技術が発展した17世紀。ミクロに、精緻に。
17世紀、顕微鏡の発明により植物の細部が明らかに。技法も精緻な表現ができる銅版画が主流になっていく。