「夏なのに勤労で日々が溶けていく…」 名フレーズにも注目のコミック『四十九日のお終いに』
ショートムービーのような余韻とハッとさせられる印象的な会話。田沼朝さんの『四十九日のお終いに』は、一編一編が忘れがたいオムニバスコミックだ。商業誌未発表作品を含め、読み切りと表題作の後日談となる描き下ろしの全9編を収録。
ありそうでなさそうな1対1の絆。各編に漂う空気感にはまる人、続出。
「1話めの『海はいかない』は、編集さんとの打ち合わせのときに、大人になってから出会った人と仲良くなることって、ちょっとめずらしいしワクワクするよね、というところから物語が広がっていったような記憶があります」
女性ふたりの距離感とテンポのいい会話の妙に痺れる短編。女性会社員の高森は、社外の女性とひょんなきっかけで、休憩所でおしゃべりする仲になる。何も起きない夏なのに、やけに思い出深いものになりそうな、ガール・ミーツ・ガールの秀作だ。
「私も会社員時代に、しゃべったことはないものの、なんとなく顔見知りという別の職場の人がいました。私には話しかける勇気はなかったですが、思い返すと、あのふたりみたいに話すことができたら楽しかったのかもしれないですね(笑)。高森たちはこの関係がずっと続くとも思っていないでしょう。