生と死の相克、それと向き合う人々…新人作家・小池水音が初著書を刊行
書きながら、最初は姉のたまきの苦しみを書くところから出発したのですが、書き進めるうちに、たまきが自分のつらさを明かせなかったのと同じように、父や母、死んだ弟もそれぞれに、きっとまた別の形で、明かせない苦しみを抱えているのだろうな、それも掬い上げなければいけないなと感じたんです」
実は「息」も「わからないままで」も、モチーフに家族が自死した経験が描かれている。だが書き方は大きく異なる。
「初めて一人称に挑戦した『息』は、ある限られた季節を濃密に描こうという試みだったので、目の前に起きる物事を追っていくスタイルでした。後者では、1章で小学生の子どもと父親のことを書き、次に成人した男性の離婚後の姿を書き…というふうに、あまり時系列で整理していかないことで、かえって浮かび上がるものはあるかもしれないなと」
『新潮クレスト・ブックス』という海外文学レーベルを愛読、「文学の栄養はほとんどそこから得てきた」と語る小池さん。そんな文学青年にとって必然の挑戦なのかもしれない。
「なぜ小説に惹かれたかといえば、やはり自分自身の体験は大きいです。それがなければたぶん小説を書くことも切実に読むこともなかった。