外国人ファンも急増中! 新版画ブームの火付け役・渡邊庄三郎の軌跡を辿る展覧会
新版画とは、江戸時代から続く伝統的な浮世絵木版画の技術を使って、同時代の画家の作品を表現したニューウェーブのこと。明治以降、写真や印刷技術の普及で衰退の一途をたどっていた木版画技術に注目し、温故知新ともいえる新しい作品を考案し広めた人物が、渡邊版画店(現・銀座8丁目にある渡邊木版美術画舗)の初代店主・渡邊庄三郎だ。
色鮮やかな新版画から渡邊庄三郎の軌跡を辿る『THE 新版画版元・渡邊庄三郎の挑戦』。
庄三郎は17歳で浮世絵商・小林文七の輸出の出店に勤め、そこで出合った浮世絵木版画特有の美しさに魅了される。その後独立し、明治42年に東京・京橋に渡邊版画店を構え、浮世絵を販売。大正4年から版元として、来日した外国人画家の作品の版画化に始まり、鏑木清方門下生だった伊東深水を中心とした新進気鋭の画家たちを絵師に起用して、新たな木版画を作り始めた。
版画は絵師、彫師、摺師(すりし)の分業で制作される。それを統括する庄三郎は版元として類いまれな才能を発揮した。
例えば摺師には、わざと凹凸のあるバレンを使って版画を摺らせて、従来にはなかった味わいのある「ざら摺り」の手法を開発。また1枚の版画に30~40回もの多重摺りを行い、古典にはなかった精緻で鮮やかな色彩を実現。