多くのミュージシャンに愛されてきた、写真家・平間至の半生を大解剖した回顧展
僕も音楽と深く関わりながら’90年代から新しい活動をこの地で行ってきた。だから今回、僕が回顧展をする場所にぴったりだと思いました」と平間さん。
彼は宮城県塩竈市にある、祖父の代から続く写真館の3代目として生まれた。クラシック音楽が流れる写真館は、地元では社交場といった風情で、そこで育った平間さんにとって、写真と音楽は常にセットで身近な存在だった。
「祖父は呉服屋の息子で、明治時代に英語を習うような先進的な家で育ったようです。伯祖父(おおおじ)は眼科医で、ドイツ留学の際に現地でカメラを買ってきたことが、祖父が写真館を始めるきっかけに。父は大学時代にオーケストラでチェロを弾いていましたが、写真館を継ぎ、僕もその後継者となるはずだったんです。でも当時の僕はこんな古い写真はイヤだと家を出て上京しました。
もともとは実家の写真館のためにメディアの写真を学んでいたはずだったんですが、あれ、うっかり帰り忘れているなと、つい最近気がつきました(笑)」
上京後、彼がミュージシャンと縁深い仕事をするようになったのは音楽雑誌がきっかけだった。「僕の師匠・伊島薫が音楽雑誌の撮影をしていた当時から、あそこには音楽好きなアシスタントがいると思われていたみたい。