多くのミュージシャンに愛されてきた、写真家・平間至の半生を大解剖した回顧展
1990年に独立したタイミングで音楽雑誌の仕事が始まり、4~5年続けた雑誌の仕事をまとめたのが写真集『MOTOR DRIVE』だったんです」
一世を風靡したこの写真集で表現された躍動感溢れる作品は、28年経った今見ても、斬新かつ驚くほどエネルギッシュだ。この作風を彼はどうやって編み出したのだろう。
「僕の師匠はネガフィルムを使って革新的なファッション写真を表現した人でした。だから僕もネガとかポジを使って新しい手法を試行錯誤したのですが、やればやるほど師匠の二番煎じっぽくなっていくことに気がついて。何度も実験を繰り返す中で、僕はフィルムの現像過程で手を加えるのではなく、現場で何かを起こす方が、自分らしい表現ができると気づいたんです」
以来、彼は写真館への反抗と称して、被写体も自身もパワフルに動き回りながら魂を解放する、まるでバンドのセッションのような撮影手法をとるようになった。
「そもそも僕はミュージシャンを撮るんじゃなくて、写真そのもので音楽を鳴らしたい、という想いが根底にあるんです。言い換えると、単にアーティストの姿を撮るのではなく、被写体と写真家のお互いが、セッションという名のエネルギー交換をした時に起こる化学反応を写真で表現したいということ。