おどろおどろしく肝が冷える話も…〈体〉をめぐる怪奇短編集『禍』
画になった手の表現がものすごくて、こうきたか、と。僕も楽しませてもらっています」
いちばんおどろおどろしく、肝が冷えるのは「髪禍」だろう。ある宗教団体の儀式にサクラとして参加すれば〈一泊二日の仕事で、十万円〉と誘われた女性。彼女の目に映った光景のホラー度が、ハンパない。
「僕も床に落ちた髪の毛に生理的な嫌悪感があるので、生々しい感覚を反映させようとがんばりました」
他者と関わることで自分の体に変異が置き、自分以外の意識と接続してしまう展開が多い。
「一体化したり融合したりはイヤなのですが、もうすぐ自分をやって50年になるんですよね。それだけずっとやっているわけですから、もう飽きちゃっているんですよね、自分に(笑)。いい加減、自分が退屈でしかたないから、他の人の頭の中や生活を覗いてみたいというのは半ば本心です。
基本的に“あり得ないこと”を書いているので、それがあり得るかのように、誰よりもまず自分自身を納得させなくてはいけない。そのせいでどうしても饒舌な文章になってしまうのですが、言葉を尽くすことで、読者にも臨場感を味わってもらえるのでは、とも思っています」
そんな小田さんの考える「怖いもの」