小島秀夫「スーツ創りは、秩序の下で自分らしさを埋め込むクリエイティブな行為」
小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第4回目のテーマは「個性を“ オーダーメイド”する」です。
トライベッカ映画祭(注1)で、ドキュメンタリー映画『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS(注2)』がワールドプレミア上映されるという。そこで、久しぶりにスーツに袖を通してみた。ところが、前ボタンが締まらない。太った?この間、スーツを着たのは、昨年の芸術選奨文部科学大臣賞の授賞式だったか。これでは登壇出来ない。痩せるか?あるいは、新調するか?
スーツは、もともと立襟式の軍服から派生した。
個を埋没させ、集団統制と画一化を目的にしたもの。その後、第一ボタンを外し、立襟を外側に折り返した民間用が、一般化して現在のスーツに。つまり、軍服も学生服もセーラー服もスーツも、“個”を縛る為の鎧ということになる。
僕の父親は高度成長期に“企業戦士”と謳われた昭和のサラリーマンだった。春夏秋冬、ダークスーツにワイシャツ、ネクタイを締め、疲弊した革靴を履いては、家と職場を往復するモノクロな毎日。