読者の声を受け…蝉谷めぐ実、新作『化け者手本』執筆秘話
これまでに発表した2作で文学賞5冠を果たしエンタメ時代小説の新星として注目される蝉谷めぐ実さん。待望の新作『化け者手本』は、デビュー作『化け者心中』に続き、文政の江戸で鳥屋の藤九郎と稀代の元女形・魚之助(ととのすけ)が怪事件に挑む内容。
鳥屋と元役者のバディが謎を解く。歌舞伎に材をとるエンタメ時代小説。
「『化け者心中』は新人賞に応募するために書いたので続編は考えていませんでした。でも選考委員の辻村深月さんが“シリーズ化を期待”と書いてくださり、読者の方々も“二人のその後が気になる”との声をくださいまして。私も書かせていただけるならぜひという気持ちでした」
前作で紆余曲折の末、バディ関係が育まれた藤九郎と魚之助。今回二人に持ち込まれた事件は、芝居がはねた後、客席で首が折られ両耳から棒が突き出た死体が見つかるという不気味な見立て殺人事件。
これは鬼の仕業なのか――。
「前作と同じく鬼が存在する世界という前提で謎を作りました。今回は従来のミステリーとは少し違う角度から突いてみたいなと思いました」
調査の過程で被害者の死を嘆き悲しむ人を騙してでも情報を得ようとする魚之助に、心優しい藤九郎は反発をおぼえる。