横尾忠則「幼児の頃から絵を描いていて、今87歳なんだけど、それでもまだ到達点が見えない」
――今の現世で、自分はどのくらい自由になったと思われますか?
いや、まだ階段の真下にいるくらいなもんですよ。階段の先は全然見えない。その階段が三次元的ではなく、四次元的階段であることを願いたいね。
――絵を描くことは、自由になることに繋がりますか?
僕の場合は絵を描くことでしか、そういった世界にはたどり着けない。絵しかないなって思うんです。僕は幼児の頃から絵を描いていて、今87歳なんだけど、それでもまだ到達点が見えない。だけどこの寸善尺魔の現世での生は最後にしたい。不退転に行くために、ただ描きむしるだけです。
できれば現世で輪廻を打ち止めにしたいですね。
――次の人生があったら、絵を描きますか?
次?絵描きなんてもう結構。今だってもう飽きちゃってるんだから(笑)。ただこれはさ、僕を司っている運命的な力が僕に描かせているわけだから、しょうがないんですよ。運命には従うしかない。「嫌だなぁ」と思いながら、絵を描く。「嫌だなぁと思いながら描いた絵ってどんなもんなんだろう、それを見てみたい」っていう。今は運命と、その好奇心によって描かされている感じで、世のため、人のためには描いていません。