横尾忠則「幼児の頃から絵を描いていて、今87歳なんだけど、それでもまだ到達点が見えない」
みたいな選択肢はなくて、「あ、そうですか」と行くしかなかった。まあそもそも2つか3つの僕に判断力なんてないですけどね(笑)。横尾家のおじいさんとおばあさんは僕を猫可愛がりしてくれて、僕が求める前にいろんなものを用意してくれた。それで19歳くらいまで過ごした結果、与えられたものに従って生きるのが一番いいんだな、というところにたどり着いて、今までずっと来てるわけ。
――ご自分から「これをやりたい!」みたいな気持ちは…。
ないない。来たものに乗る。あ、でも今ちょっと面白いことをやっていて。
前衛音楽家のテリー・ライリーさんという人がいるんだけど、ちょっとした偶然で出会った彼と2人でグループを作ったの。テリーさんが音楽を演奏する後ろで僕が絵を描いたり、展覧会の会場で僕の絵をイメージした曲を演奏してもらったり、そういうことをいろいろやろうって。でも、僕は87歳で、彼は88歳だから、おじいさんグループなんだよね(笑)。しかもグループ名は、2人の年齢を足した数字なんだけど、毎年変わるわけ。だからなかなかグループ名が思い出せない(笑)。
――めちゃくちゃ楽しそうです。
でしょう。あのね、どんな運命でも面白がるしかないんです。