『我が友、スミス』は芥川賞候補に! 石田夏穂「普通の人の話を書きたい」
私はそういうのは都市伝説並みに疑っていますね(笑)。マナーの良し悪しや普段の行いは基本的には仕事の能力とは無関係なのに、誰かを批判するときにそういうことも材料にされるのはイヤだなあと。たぶん私は安易なポジティブシンキングが嫌いなんですよね。希望に満ちていない、ネガティブな人物の方に惹かれます(笑)」
そんな石田さんが、言葉の力を感じるのはどんなときなのだろう。
「カッコいい小説を読んだときとか、すごくシビれます。髙村薫さんや古処(こどころ)誠二さんは大好きで、ディテールをこまやかにすくい上げて、登場人物がどこに意識を向けているかをあくまで客観的に描いているのに、読み手にその心情がヒシヒシと伝わってくる感じが好きです」
そこに、特別な何かを持つ人は出てこない。むしろどこにでもいるような人が右往左往したり四苦八苦する姿が面白い、と石田さん。
実際、石田さんが書く主人公たちはみな自分の職務や趣味嗜好など、目の前のことに対して真面目だ。
真面目がすぎて可笑しみを誘うほど。その人間くさいユニークさも石田さんの小説世界の大きな魅力だろう。
「生身の人間ってほとんどが地味な仕事をしていて、ルーティンに則って生きているものだと思うんです。