無傷で生きていくなんて誰にもできない…公園の古びたカバの遊具がつなぐ物語
青山美智子さんの新刊『リカバリー・カバヒコ』は、新築分譲マンション〈アドヴァンス・ヒル〉に住まう人たちの群像劇だ。
公園の古ぼけたカバの遊具がつなぐ、傷ついた人たちの回復と絆の連鎖。
マンションそばの日の出公園には〈リカバリー・カバヒコ〉と呼ばれる古びたカバの遊具があり、その地域では「ケガや病気でつらい箇所やコンプレックスに思う何かなど、自分の治したい部分に触れると回復する」というまことしやかな噂が信じられていた。
「どこか悪くなるとみな、お医者さんにかかったり、『効く』といわれたことを試したり、いろいろしますよね。その中にはお参りするというのもある。たとえば東京・巣鴨のとげぬき地蔵は有名ですが、物質的にはお地蔵さんってただの石ですよね。なのに、信じる人も、実際に治る人もいる。真摯な願いが人や状況をどう変えるのか。
そんな思いの部分を書きたいと思ったんです」
物語は、視点人物が変わる5つの連作スタイルで進む。進学した先で成績不振に悩む男子高校生の奏斗、幼稚園に通う娘のママ友グループに違和感がある紗羽、ストレスで休職中のウェディングプランナー・ちはる、駅伝がイヤで足をケガしたふりをした小学生の勇哉、老いた母親との不和に悩む50代の雑誌編集者。