演奏の難しさと喜びを生き生きと表現! 吹奏楽青春譚『宇宙の音楽』
読み手も呼吸を重ねながらページをめくっていく高揚感を味わえる。
「海外では吹奏楽をウィンドバンドと呼んだりするのですが、息が集まって風が吹き抜けるような爽やかさや力強さを表現したかったんです。マンガの大前提として音を出すことができないので、音以外の周辺の部分を丁寧に描くことを心がけていました。それこそ音楽以外の場面で、たとえばマンガを描いていても編集さんと息が合う瞬間があったりするので、そういう感覚も後半のほうでは特に大事にしていましたね」
演奏の難しさと喜びが生き生きと表現されているのは、山本さん自身が吹奏楽経験者であることも大きいだろう。本作が連載デビューになるのだが、これまでも一貫して吹奏楽を題材にしたマンガを描いてきた。
「『アイシールド21』や『SLAM DUNK』のようなスポーツマンガに対する憧れと、中学で始めた吹奏楽に夢中になる気持ちが重なって、好きなマンガで、好きな吹奏楽を広めたいと思ったのがきっかけです」
そんな山本さんにとっても指揮者は未知の部分が多い存在で、チャレンジングな設定だったようだ。
「スポーツでいったら監督的な立場なので、高校生だと学生が指揮棒を振ること自体が少ないんです。