著者の仰天モノの遍歴も反映!? 地方に住む少女の約20年の成長を描いた小説
佐川光晴さんの『あけくれの少女』は、主人公の真記が、小さな運送会社を営む父とその経理を担う母、運動神経のいい8つ下の弟に囲まれて暮らす、広島・尾道での少女時代から幕を開ける。英語が好きで英語教師を目指し、両親から上京の許しを得るためにある計略に出た高校時代までを描いた「第一章 尾道スクール・デイズ」、進学し、中華料理店や観光通訳のアルバイトなどで居場所とお金を得て楽しんでいた大学生活から心機一転を迫られる「第二章 飯田橋キャンパス・ライフ」…と時系列で進んでいく4つの章からなる。真記の明るさやたくましさ、周囲の人々の温かさ、運を引き寄せる力は朝ドラを思わせ、読むとエネルギーチャージできそうな一冊だ。
禍福は糾(あざな)える縄の如し。ヒロインの約20年の成長の軌跡が、爽やかだ。
「いま親ガチャみたいな言い方がよくされて、親というものが簡単に否定されますよね。でも、それぞれが性分や価値観など親の代から引き継いでいる何かしらってわりにあると思っているんですね。それがどういうふうに真記の身になっていくのかをきちんと描きたくて、満州に駐屯していた祖父の終戦時のエピソードや、両親の駆け落ち話なども書いています。