暗い~、ハッピーになれない~! だけど観てほしい! “善意”を問いかける『水平線』
正直言って、超重量級。だけど、ご覧いただきたいの。なぜなら、おこもりコロナ禍を経て、リアルで人に会えるようになった今だからこそ、「人への優しさ」っていったいなんなのかを考えさせられるはずだから。それが『水平線』です。
善意ってなんなんでしょうね…。
舞台は福島。亡くなった人の遺骨を海に散骨する個人事業を営む井口(ピエール瀧)は、水産加工場で働く娘の奈生と2人暮らし。実は彼、東日本大震災で妻を失い、いまだ遺骨が見つからないでいるもんだから、散骨業自体も複雑な気持ちだし、なんなら娘はそんな父とは微妙に距離をとっているのね。
そんな井口のところに、なにかワケアリの男性が、自分の兄の遺骨を持ち込みます。後日、彼を訪ねてきたニュース動画サイトの記者によって、ワケアリ男性が持ち込んだ遺骨は、数年前に大ニュースになった連続通り魔事件の犯人のものだったことが明らかに。一方、奈生はしょっちゅう欠勤や早退をする職場の同僚の女性にちょいとイライラ。シングルマザーで一人息子がいるからと、事情をくみとってつきあってるんだけど、同僚のお願いごとはエスカレート…。中盤までは井口と記者のエピソード、奈生と職場のエピソードが別々に進むんだけど、終盤でものの見事に収束していくという群像劇。