被害者と加害者が共同生活!? 深遠なテーマを内包した意欲作『ノラの家』
誕生日ディナーに家族で向かう途中、もらい事故で両親を亡くした主人公の平沢実斗(みと)。自分は指に後遺症が残りバンドデビューの夢も潰えた。思い出の詰まった家も、新しい所有者となった作家の浅賀から〈加害者が集うシェアハウス〉になると告げられてしまう。だが、実斗は、ひょんなことからその家で加害者たちと一緒に暮らすことに…。被害者と加害者はふれ合うことで何かを変えることができるのか。夕海さんの『ノラの家』は、そんな深遠なテーマを内包した意欲作。
対話は悲劇のストッパーになり得るか。予測不能の物語がここから始まる。
「ハードな設定だと言われるのですが、一見真逆の立ち位置に見える被害者と加害者って、実は同じような葛藤を抱えているように思うんです。誰にも自分の気持ちをわかってもらえないとか、居場所がなくて孤立するとか。それでも腹を割って話したら相容れないと思っていた相手を少し理解できたりもするのではないかと。対話せざるを得ないような状況って何かなと考えたとき、共同生活をさせようと思いつきました」
かくて浅賀が集めたルームメイトは、実斗を含めて5人。1巻ではまだルームメイトたちがどんな加害をしたのかの詳細はわからないが、交通事故加害者が交じっているらしいことや、実斗を過剰に敬遠する人間がいることなどは描かれ、今後の伏線がたっぷり詰まっている。