生成AIを創作に取り入れたことでも話題! 新芥川賞作家・九段理江が文学について思うこと
ザハ建築が建ってようが、そんなことで世界は変わらないですよ』と言われちゃって。でも、もし東京タワーの外観が今と全く違っていたら、やっぱりそれを眺める人の意識も変わるんじゃないかなと思うんですね。だって、小説の力みたいなものがバタフライエフェクトになることもあるわけですから。私自身もそうだし、誰でも一冊の本を読んで変わってしまったという経験を否定できない。本程度の重量のものでそうなるのなら、巨大な建物がそびえていたときの、その影響力は凄まじいと思うんですよ」
そんな九段さんに影響を与えてきたのは、宮沢賢治や三島由紀夫、泉鏡花など古典が多い。
「日本文学でしか味わえないような、自然の風景や日本的なもの…何より、日本語の美しさそのものに惹かれていたんだと思います。それぞれの時代で価値が変わっても、また新しい読み方ができる、新しい読者を獲得するのが読み継がれてきた古典の力であり、魅力だと思うので、まだ読めていない古典をもっと読みたい。逆に、同時代の作家で次回作を楽しみにしているような存在はあまりいないんですよね。
朝比奈秋さんくらいかな。むしろ、自分が何を書いていくかを楽しみにしていますね」
『東京都同情塔』は、思索を言葉にし続ける建築家の沙羅と、彼女の言葉を反射させて語る美貌の青年・拓人、AIが紡ぐ言葉の三位一体が放つ魅力に引き込まれる。