構想・執筆に10年かけた恩田陸によるバレエ小説『spring』 架空の演目は「私の妄想です (笑) 」
第4章は、春自身の視点で綴られる。
「全章他の人の視点にすると、天才って理解不能なモンスター的な存在に見えてしまう。それで、本人に語ってもらうことにしました」
彼の内面や人間味を知るからこそ、終盤は読者の気持ちも盛り上がる。
作中にはさまざまな演目が登場。
「どの曲を使ってどういう踊りにするか考えるのは楽しかったです。文章化するのは大変でしたが(笑)」
架空の演目も多数登場する。鏡映しのように2人が踊る「ヤヌス」、映画『マトリックス』の音楽へのオマージュとなる曲が作られた「アサシン」、寓話劇をベースにした「三つのオレンジへの恋」…。
「『マトリックス』のサウンドは傑作だと思うので、あれで踊ってほしかったんです。
私の妄想です(笑)。他の架空の演目も私の趣味が入っていて、誰か実現してくれないかなと思いながら書きました。一番実現してほしいのは『三つのオレンジへの恋』です。完全オリジナルなら『KA・NON』かな」
どんな演目かは読んでのお楽しみ。恩田陸『spring』8歳でバレエに出合い、15歳で海を渡り、舞踊家、振付家として開花していく一人の天才。彼を通してバレエの魅力を描き切る長編小説。