松井玲奈「エッセイの“秘密を共有させてもらう喜び”を感じてもらえたら」 2冊目のエッセイ集を上梓
私は物事を記憶するとき、自分の主観で見た映像ではなく、別のところにあるカメラで私を含めた状況を撮っている、そんな映像で覚えていることが多いんです。もしかしたら、“かつての私”に関して書いているところが俯瞰の描写になっているのは、そのせいかも…。でもその“記憶の形”も、このエッセイたちを書かなければ気がつかなかったこと。いろいろな発見がありますね(笑)」
小さい頃から、作文を書いたり、絵を描いたり、芝居をしたりなど、自分の中にあるものを表現することが好きだった。今の松井さんにとって文章を書くことは、デトックスすることにも近い、とも。
「思考や思いは、自分の中にある間はなかなか形にできないもの。それを吐き出して、ベタベタと触りながら、粘土を固めていくように形作っていく作業が、今の私にとっての“書くこと”です。それはどこか、心の整理や調整の作業にも近い。
連載が終わった今、エッセイが書けないのがちょっとつらいので、日記を書くようになりました(笑)」
表紙には、レトロなウォーターゲームの中を女性と魚が気持ちよさそうに泳ぐイラストが。表紙をめくると現れるのは、深い海のようなブルー。タイトルは、松井さんが地下鉄の駅で偶然見かけた、水槽を描いた絵画に着想を得た。