少女たちに夢を、女性たちに人生の道標を。中原淳一、生誕111周年記念展覧会が開催
戦後は自身が編集長を務める『それいゆ』を創刊。その後も少女向け雑誌『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』や『女の部屋』など女性のライフスタイルのお手本ともいうべき雑誌を次々と手がけていった。
中原が作品の中で掲げた“美しさ”とは、知性や審美眼を鍛えてこそ得られるものだった。『それいゆ』には、オリジナルの洋服デザインから髪型、美容、インテリア、手芸など衣食住を美しく整えるよう説く記事とともに、文学、音楽、美術などの内面を磨くための記事も多数掲載されている。彼のこうした徹底した美意識は、内弟子だった芦田淳をはじめ、高田賢三や金子功、森英恵、丸山敬太など後世代のクリエイターにも大きな影響を与えた。
生涯にわたって多彩な仕事に携わった中原だが、その出発点は昭和5年の人形作家デビュー。昭和34年以降は体を壊し、療養生活に入った時でも彼は身近な材料で男性の人形を作っている。本展はこの人形制作に注目した展示も見どころのひとつだ。
戦後の混沌とした時代に「暮らし」という視点から様々な提案を行った中原の仕事は、女性にとって人生の道標となった。その仕事は現在にあっても決して色褪せない。いま見ても美しさや豊かさの本質が何かを教えてくれるはずだ。