成河「観ている人も巻き込んで裏切ったり裏切られたり」 舞台『ピローマン』の魅力を語る
物語を人と分かち合うことに何の意味があるのか…それを徹底的に考えている人なんだと思います。僕の役は、カトゥリアンの書いた物語を読み上げるストーリーテラー的役割もあるんですが、そこが複雑な入れ子構造になっていて。観ている人も巻き込んで裏切ったり裏切られたり。面白いです」
演出は小川絵梨子さん。戯曲の魅力を舞台上に余すところなく表現する演出が高い評価を受けている。前述の戯曲を持ち寄って読む会の発案者でもある。
「絵梨子さんの突出したところは、戯曲に書かれた会話を、究極に極め尽くすところです。よく『台本がすべて』と言うのですが、作品を追い越して自分の色を出そうとは絶対にしない。
今回は翻訳も絵梨子さんがしているんですが、さらにキャスト全員で原文から一行一行解釈し、語尾のひとつに至るまで言い回しを徹底的に話し合う。役を生きるうえでの俳優の担う領域…俳優芸術の部分も大事にしてくれる。妥協は一切ないので厳しいですけどね。僕は、俳優の肉体ありきの考え方で作る演劇も経験していて、そっちも面白いし好きですが、絵梨子さんが目指している俳優芸術の領域はあれもこれもと欲張ってできるものじゃない。それくらい高いものを目指して向かっています」