カメラ歴10年のかが屋・加賀翔「あまりに天真爛漫で純粋無垢」 阿佐ヶ谷姉妹を捉えた瞬間を語る
カメラを覗いたまま何が起きたのか見守っていると、エリコさんがミホさんに何か耳打ちをし、舞台袖まで逃げるようにして戻ってきました。何か問題が起きたのかと思い、スタッフの皆さんも心配そうに近づきます。何が起きたのか聞くと、エリコさんいわく、出囃子が鳴って飛び出たけど舞台に出た瞬間に本当に自分の番だったかわからなくなった、とのことでした。うっかりド忘れして戻ってきてしまったお二人のその時間があまりに天真爛漫で純粋無垢で客席も袖も柔らかいピンク色に包まれました。僕はカメラを持っていたおかげでその間ずっと撮り続けられましたし、どんな時でも持っていて本当に良かったと思いました。
写真には前後を想像させる余白があり、その余白で実際にどうだったかだけではない新たな思い出が生まれます。高円寺でのお二人をもしスマホの動画で撮っていたら、自分で見返した時に余韻や周りの人の感情を想像していなかったかもしれません。全てを残すのではなく瞬間を残すことでより強い思い出になることがあり、スマホではなくカメラをわざわざ持っていることで、持っていて良かったという気持ちも生まれます。
荷物になりますし非常に邪魔な瞬間もありますが、生活の中に起こる感情の変化が1.5倍になるようなこの感覚を僕は体験してもらいたいです。