感性を育む。平安の切ない恋物語とは【1月11〜15日】
そこに込められた思いに耳を澄ませてみると、聴こえてくるさまざまな声がありますよ。
宮廷を揺るがしたスキャンダラスな恋
「昔、男ありけり」の有名な書き出しで始まる「伊勢物語」には、平安の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)と、名門藤原家の美しき娘・藤原高子(ふじわらのたかいこ)の悲恋を題材にしたお話があります。
高子は生まれたときから、清和天皇の将来のお后候補として、蝶よ花よと大切に育てられました。そんな美しい高子に恋をした17歳年上の在原業平は、高子のもとへ通い、思いを伝えます。
強く惹かれ合い、愛し合う仲となった二人は駆け落ちを決意。屋敷を抜け出したのですが……。
露と消えた恋
逃げる途中、草の上に輝く露を見て、「あれはなに?」と業平にたずねた高子。高子は深窓の姫君ですから、露を見たことがなかったのです。雨が降りしきる中、二人は追手につかまってしまい、引き裂かれてしまいました。
そのときの思いを、業平は和歌にこう詠んでいます。
「白玉か 何ぞと人の 問ひしとき 露と答へて 消えなましものを」
「あれはなに?とあなたが聞いたとき、露だよとこたえて、わたしもあの露のように消えてしまえばよかったものを」