感性を育む。平安の切ない恋物語とは【1月11〜15日】
高子はうぐいすに自身の思いを重ねて、和歌を詠んだのでしょうか。うぐいすが涙を流す、という視点もさることながら、その涙が凍り、そしてとけるという実際にはありえない表現からもまた、いにしえの人々の感性が伝わりますね。
これを恋の歌と捉えれば、どこか淡い希望を感じる表現の中に、意味深な響きも感じられてなりません。しかし、再会の喜びからほどなく業平はこの世を去り、二人の恋は終わりを告げたのです。
移り行く自然に恋心を託し、多くの和歌を詠んだいにしえの人たちの感性。目には見えない自然のかすかな兆しや、気配さえも感じとる感性を磨くことは、恋はもちろん、人生をより豊かなものにしてくれるでしょう。
【参考】『くらしを楽しむ七十二候』広田千悦子/泰文堂、『伊勢物語』坂口由美子/角川学芸出版、『福を呼ぶ四季みくじ』三浦奈々依/株式会社プレスアート