恋に落ちた瞬間のあのキュン!となる気持ち【私をしあわせにしてくれる1000のアイテム】#0053
「この世のなごり。夜もなごり。死に行く身をたとふれば、あだてが原の道の霜」
この文脈ではじまる有名な道行の場面というと、いよっ、待ってました!「曽根崎心中」でございます。
この近松門左衛門の「曽根崎心中」を作家の角田光代さんが、現代に蘇らせてくれました。
江戸時代、大阪で実際にあった、堂島新地の遊女・初と醤油屋の手代・徳兵衛との悲恋を初の視点で書いています。
文章のリズムがいい。そのあたりも、角田さんの手腕に脱帽します。遊女に惚れる、ってことは、今でいうと、キャバクラに通うようなものでしょうか。
それでいて、いつしかキャバクラ嬢も、そんな男に魅かれていく(ちょっと、違う気もしますが)。
観音めぐりをしていて、初が恋する徳兵衛に出逢うシーンがあります。
観音めぐりとは、上客に遊女が誘われて年に1度か2度、遊郭の外に出られて、西国33所を巡礼する、言うなれば、観音信仰みたいなことです。
そして、初は徳兵衛とのことをお願いし、偶然にも徳兵衛と出逢います。
「おなじ背丈でもほかの人とちがうのは、着物でも背丈でもない。光だと初は気づく。光に包まれるようにして、おもてを行き過ぎようとする徳兵衛の姿がある」