『永遠の僕たち』ガス・ヴァン・サント監督「自分の見知ってる場所に、帰り始めてる」
闇なくして光は描けないから、その対比ということなのかも」。
――「死」に関連しては、長崎の原爆のキノコ雲と廃墟の町のショットを入れた理由は?
「加瀬亮扮する特攻隊員のヒロシは、長崎に原爆が落とされる直前に死んでいる設定だったから、アナベルが長崎のことに触れても、そんなことがあったなんて知らない。でも結局は知ってしまって、同じ日本人を、長崎の町を悼んでいるんだと思う。この映画の重力のターニングポイントにもなっているんだよ、あそこは。ちょうどあの瞬間でトーンが変わるんだ。観客もいずれアナベルに死が訪れることを知っているが、あのショットでその事実を思い出す。だからあの瞬間から暗澹(あんたん)としてくるんだ。実際、キノコ雲の描写は脚本にはなかったんだけど、視覚的なサポートとして僕が足した映像だよ。
亮はあのショットがあるのは知っていたが、ヒロシとしてはもちろん知らない」。
――ヘンリー・ホッパー扮する主人公・イーノックが葬儀所をブラついていたり、そこでアナベルと出会ったり。『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』や『禁じられた遊び』を思い出してしまいますが。「その要素はあると僕も思うよ。脚本を書いたジェイソンはそうした映画を観ていないと言っているけれど、僕は『永遠の僕たち』を作る前に観てるから、どこか共鳴しているところはあるかもしれないね」。